遺言は家族のためのもの

 遺言書と言うと決して良いイメージを持たれないかもしれません。「まだ死にそうじゃないのに死んだ時のことなんて不謹慎じゃないか!」やら「死ぬことなんてイメージ出来ないからどんな言葉を残せばいいかなんて理解できないよ」といったような悩みを持っている方もいるかもしれません。しかし、それはいわゆる「遺書」というもので、「遺言書」とは全く別のものです。遺書というと自殺をする人や、これから死ぬ人が書くイメージがありますが、そんな人は「遺書」は書いても「遺言書」は書きません。このような「遺言書」ですが、いわゆる「相続書」とでも言い換えるべきもので、予め書式が決められていて、自由に記述出来るようなものではなく、ただ自身が死んだ後の財産の分与をどうするのかについて法的に定める文章の事を言います。勿論、その「遺言書」の詳細を備考する形で、「遺書」や「エンディングノート」等を残す事は出来ます。しかし、基本的に遺言書に関しては「どれだけの財産が、どんな種類であって、どのように相続するのか」について国によって決められた書式で書かなければなりません。また、それは開封等に関しても予め手順が決まっているため、お金に余裕があるのであれば、公正証書による遺言の製作をしておいた方がいいでしょう。

遺言書が無いとこんな事になります

 もし遺言書や用意されていなかったとしたら、貴方の残された家族や相続人は財産がどれだけあって、どんな種類があるのかがわかりませんから、それを一々調べ直す必要が出てきます。これは死後三ヶ月内に行わなくてはならずそれまでは預金が封鎖され遺産に関するモノへの一切のアクセスが絶たれるのです。これらは遺言書があれば迅速に進みますが、場合によっては家族以外の相続人と家族がもめて、中々思うように確認作業が進まず、また裁判等を起こそうにも預金が封鎖されているため泣く泣く家族以外の相続人のいうことを受け入れなくてはいけなくなってしまうといったような場合もあります。これに関しては花井愛子という少女小説の分野で著作が多い作家の方の話が有名で、現代ライトノベルの基本を作った一人である彼女ですが、最盛期の印税所得は月額1000万円に達していたものの印税の大部分の受取先を父親の名義にしていたことから、ガンで父が死亡した折に、これまで面識のなかった腹違いの兄や姉との法的係争に巻き込まれてしまったといいます。このような際に遺産が凍結され、全くの金銭的援助を受けられなくなったため、生活に困窮するようになり、しかもこれらの問題のせいで原稿を書く時間もごっそり減り、なおかつ当時彼女が所持していた有価証券がバブルの煽りを受けて二束三文になってしまったことから、一文無しを通り越し借金の女王となってしまったのでした。勿論額の多寡はあれど、同じような問題が起こらないとも言えません。その為にはちゃんとした遺言書があることと、もし万が一口座の受取人を同じにしているのであれば、分けるか、ちゃんとどの分が自分の財産で、どの分が別の人の財産なのか明確化し文章に書いておく必要があるのです。

遺言書は守らなくてもいい

 それでも、遺言書のせいで、某ミステリ作品のように事件に発展しそう等と考えている人もいるかもしれませんが、実質、遺言書というものは無視しても構わない事になっているのです。どういうことかと言うと、たとえば子供達があまり仲がいいとは言えず、妻にほとんどを相続し、子供達には少しの額しか遺言書にかかなかった場合があって、それに関して文句を言う子供達に対して妻は「仲良く出来るのであれば、遺言書は無視する」といったようなのです。これに関して子供達は同意し、妻と子供達での財産分与はさくさくと進み誰一人文句をいう人はいなかったそうですが、つまり、相続人全員の同意を取ることができれば遺言書は無視することも出来るということになっているのです。また、自身が遺産の受取人として遺言書にかかれていた場合においても、それを拒否することも出来るので、余計な争い事を避けたかったりする場合は、一切の権利を拒否することも出来ます。

折角家族の為に買ったマイホームが台無しに

 遺言書がなかったせいで、これまではマイホームを失ったという場合もかなり多くありました。これまではそうした相続税の関係で家を失うこともよくありましたが、これに関しては今現在「8割減特例」という法律があって、殆どの場合大範囲に相続税を減らすことが出来ます。しかし、マイホームだけ相続するといったような限定相続等の手続き等が必要な場合は、やはりどうしても遺言書等があった方が便利になってきます。また、一つの家を相続者で分割するという話になってしまい。結果として家を失ってしまう確率もありますので、事前に方の範囲内で分配を決めておくというのが一番かしこい方策かと思います。

借金を相続してしまうリスク

 更に、もう一つ、借金を相続してしまうリスクもあります。借金をしていないという人もいるかもしれませんが、住宅ローンや車のローンといったようなものであれば世俗的な人においても残っている確率はあるのではないでしょうか? これについては3ヶ月内に借金の量と相続できる遺産の量を判断して決断を下さなくてはならないのですが、もし万が一多額の借金があるのにも関わらず放置していた場合、その借金の支払い義務が生じしてしまいます。これは全ての相続人に当てはまることで、自身が相続人であることを知らずに放置していた等といったような危機な場合が多々あると言われています。こうした場合は、相続拒否等の手続きを早い段階で進める必要があるので、ちゃんとした財産の確認が必要になります。勿論これも、遺言書があれば、どの程度財産があるのか把握できるため、未然に防げるリスクだとも言えます。

遺言書について知らないとありがちなミス

 誰もが遺言書を見つけたら開けてしまいたくなるものですよね。しかし、これらは開封せずに家庭裁判所へと持っていく必要があるのです。これを「検認」といい、偽造や詳細変更等が無いかといったような事を確認するためのものです。もし万が一これらの作業の前に開封してしまうと、5万円以下の過料といったような罰金が課せられてしまうのです。「あんまり大したこと無いんだな」と思った人もいるかもしれませんが、これはあくまにおいてもうっかり開けてしまった場合に関してです。故意に開けた場合や、偽造したのでは無いかと疑いをかけられた場合に関しては、最悪遺産相続の権利を失ってしまうこともあります。これを相続人の欠落事由といい、「遺言書を変造したり、破棄したり、隠匿した者」に関しては一切の相続の権利を失うとされています。勿論ただ開封しただけでは、これらの事由には引っかからないじゃないかと思った方もいるかもしれませんが、場合によってはあらぬ疑いをかけられてしまいこれらの事由が誤って適用されてしまうかもしれません。ですので。遺言書を見つけたら真っ先に家庭裁判所に提出するべきです。

遺言書の開封を防ぐためには

 このような遺言書の開封を防ぐために、遺言書自体を二重封筒にし、中の封筒に「絶対にこれより上開けずに家庭裁判所に持って行くこと」に関する旨や「相続人の欠落事由」に関して説明する文章を入れる等という方法がありますが、勿論そうした手間をかけなくても、公正証書による遺言であれば、こうした事前開封等のリスクを回避することが出来ます。

遺言は必要!